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今後20年で医療はAIによってどう改善されるか

今後20年で医療はAIによってどう改善されるか

AIは、予測分析とハイパフォーマンス・コンピューティングと併せて、想像が及ぶ限りすべての業界を実質的に巻き込んでいます。医療分野ももちろん例外ではなく、先進的な診断などの研究がすでに進行中です。

傷跡を残さず縫合するような手術が可能になったり、人型ロボットが治療したり、といった世界はまだ夢物語ですが、今後20年ほどの間に、人の命を救ったり、寿命を延ばすことにつながるような医療の革新は起こり得るでしょう。

医療従事者が新しいテクノロジーへの抵抗が強いことはよく知られています。または、他方の極端で、実証されていないソリューションを早々に採用してしまうこともあるようです。

AIが医療分野で効果的に活用できるようになるまでには、様々な変化が必要です。AIの進歩に備えるために医療従事者がするべきことは何でしょうか?将来の医療はどのようなものになるでしょうか?実際のところ何が変わるのでしょうか?

進化したAIを医療分野に応用するための準備

フューチャリストや医療専門家は、AIが今後20〜30年で医療の情景を変えると予測していますが、テクノロジーの導入と統合は一朝一夕には起こり得ないので、急激な変化が一気に起こるということはありません。いくつかの準備が必要です。

SASの健康と生命科学グローバルプラクティスのプリンシパル医療コンサルタントであるAlan Cudney氏は、AIは医療制度を変えて医師や病院に影響を与えると予測しています。

ただし、その前にインフラストラクチャのアップグレードが必要になります。

「電子医療記録を普及させるのにインフラストラクチャから見直して開発しなければならなかったように、AIを活用するには同様の優先順位付けと成長が必要になります。AIに固有の技術リソースを最大限に活用するためには相当の高度なインフラストラクチャが必要になるため、医療機関の統合が進むことになるでしょう。」と、Cudney氏は述べています。

人材についてもよく検討する必要があります。

「AI開発には、能力の高いアナリスト・臨床医・データ科学者などの協力が得られ、高機能のソフトウェアが利用できる、成熟した分析プラットフォームの基盤が必要です。」とCudney氏は述べています。

新しいテクノロジーを導入するときは、それをどう使用すべきかのトレーニングが欠かせません。

Cudney氏は次のように話します。「医師、クリニックのリーダー、アドミニストレーター、そのほかの医療従事者は、新テクノロジーを最大限に活用するために”データ処理の精通者”にならなくてはなりません。リソースには限りがあり、データ科学者の果たす役割の重要性は増大するでしょう。」

現在でも熟練したデータ科学者は需要が高く、人件費も高くなりますが、基盤が整えば、「AIは、より効率的で効果的、かつそれほど高価でない、パーソナライズされた高度な医療の提供を可能にします。」

 

医療分野における将来のAIアプリケーション

Cudney氏によれば、医療分野にAIを適用できる可能性(氏は、実践的な例も提供しています)として、以下のような使い方があります(これらに限定されるものではありません)。

1. 治療法決定支援

「収集した大容量データを一箇所から集中管理できれば、治療の現場において、患者のこれまでの病歴や患者と類似した遺伝的情報を持つ他の患者のデータなどを効果的に利用して、治療方針を決定することができます。臨床医は、成功の可能性が最も高い治療オプションを選択することができます。」とCudney氏は説明します。

たとえば、ある糖尿病患者について、その患者により適切な方法を決定するためにいくつかの治療オプションを検討するときにAIを利用することができます。まず、対象を別の都市にも広げて関連する入院があったか、処方箋をいつ何回使ったか、糖尿病管理の指導は受けたかなど、当該患者の完全な病歴をチェックすることができます。新しいタイプのインスリンを処方しようとしたとき、臨床システムが、当該患者の臨床歴と遺伝地図を照らし合わせて、この選択肢で糖尿病をうまく管理できる可能性は39%に過ぎないと回答するかもしれません。

2. 予測分析

Cudney氏は、「予測分析によって、新しいデータが追加されるごとに更新される進化型治療モデルを構築できます。データ量が増加するにしたがって予測はより正確になります。患者にパーソナライズされた積極的な医療を行うことが可能になります。」と話します。

たとえば、継続的な医療の中で、集約され統合されたデータソースを使用した予測モデルを利用し、効果的で効率的な処置を行って、患者の状況に応じて健康体に戻したり悪化を遅らせたりといった支援が可能です。追加された新しいデータは、機械学習によって予測モデルを更新するのに使用されます。更新され最適化されたモデルは、コホート選択、リスク層別化などを行い、最適な処置の選択に利用されます。

3. 行動指標

「ソーシャルメディアの行動指標を分析し、ショッピング習慣を監視し、健康関連データを集計することによって、どのようなことが健康的なライフスタイルの維持やリスクの軽減につながるのかが確認できます。健康状態を悪化させる習慣を指摘したり、処方薬服用のリマインダーを送信するなど、積極的に患者に働きかけることができます。コミュニケーションの仕方も、以前その患者に有効だった方法を使うようカスタマイズできます。」とCudney氏は述べています。

たとえば、ある患者はアンケートに記入することを嫌い、最近5回の受診予約のうち2回受診に来ませんでした。ボイスメールは使用しておらず、テキストメッセージや携帯電話の自動リマインダーに応答して薬を服用しています。人工知能は、患者のこれまでの行動に基づいて、健康状態を向上させるのにどのようなコミュニケーションを行えばいいかを正確に予測する予測モデルを作成し、さらに継続的に最適化するために使用されます。

4. 在庫管理

Cudney氏は、次のように説明します。「医療用品供給会社は、Amazonが今後の受注を予測するのと同じように、予測分析を利用して在庫管理を行い、遅延なく医療用品を供給することが可能です。運搬のコストを最小限に抑えながらも、医療に支障をきたさないよう、特殊な薬や機器の保管場所や補充のタイミングなどを効果的に予測します。」

たとえば、公衆衛生のデータと病院のデータを使って、ミシガン州の6つの郡で、家庭用酸素の需要がピークに達することがわかったとします。必要量を迅速に算出して、家庭用酸素とその配達要員をその地域に送るよう示唆するAIを利用すれば、可能な限り速やかに対応を開始することができます。

5. 処方薬の分析

「製薬会社は、同じ予測技術を、処方薬を個々の患者に最適なようにカスタマイズするために使用できるでしょう。」と、Cudney氏は指摘します。

たとえば、高血圧をコントロールするために新しい薬を処方する場合、その薬の分子構造および投与量を、患者の遺伝的要因や他の抗高血圧薬への以前の反応を考慮してわずかに調整することも可能になるでしょう。

6. 画像解析と画像診断

「大学の医療センターなどの医療提供機関は、放射線画像のディープ・ラーニングによってサポートされる自動画像解析を使用するようになるでしょう。ディープ・ラーニングを使った詳細な自動分析とこれまでの専門家による分析を組み合わせることで、経験の少ない診断者にもある程度標準的な診断が行えるようサポートし、放射線医の負担を軽減できます。効率を高め、コスト削減にもつながります。医療センターの医師は、自動画像解析を異常な病変の検出や医療トレーニングの支援に使用することができます。」と、Cudney氏は説明します。

たとえば、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)は、画像チェック時に見逃されることがときどきあります。HHTの先駆的治療センターであるSAS大学の医療センターには、数百人のHHT患者の肺に見られる動静脈奇形(AVM)の画像が保存されていますが、これらを利用すれば、初期段階のAVMを検知して放射線医にアドバイスするAIモデルが作成できるでしょう。

Cudney氏はAIの様々な潜在的な可能性を概説しましたが、臨床医療の多くの側面に対してAIが貢献できることは明らかです。問題は、医療機関と医療従事者に革新への準備が整っているかどうかです。

新しいテクノロジーへの準備

多くの国では医療分野でデジタル化が進み、紙ベースの医療記録は過去の遺物になりつつあります。AIや関連技術の導入には、情報のデジタル化のために行ったのと同様のアプローチが必要です。

「今後の(AIにつながる)分析技術の進歩を利用するためには、病院などの医療提供機関は、分析に対する捉え方や対応を成熟させる必要があります。医療効果を最大限に引き上げるためには、分析によって得られたあらゆるデータを駆使して、医療手段の選択と患者への対応を最適化することが必要です。」とCudney氏は述べています。

分析への対応としては、必要なソフトウェアを実装したり、ソフトウェアを使用するためのアクセス権を購入したり、あるいは内部での対応が難しければ分析機能をアウトソーシングすることなどが考えられます。

「すべての臨床医、リーダー、運用スタッフにデータ処理の基本的なスキルを身につけてもらうこと、日常業務に分析モデルとプロセスを組み込むための組織方針を決定することなども検討するべきです。」とCudney氏は付け加えます。「AIを効果的に利用するためにはモデルの高い品質と確かな実行可能性が必要で、一貫したデータガバナンスとデータ管理の実践も欠かせません。」

AIが近い将来、医療分野で上記のような貢献をするためには、堅牢なデータプライバシー保護とデータから個人識別情報(PII)を取り除くといったコンプライアンス要件を満たすことも要求されます。医療データを収集することは大切ですが、倫理的な方法で実施する必要があります。コンプライアンス規制に違反すれば、高い罰金を課せられることもあります。

ロボット外科医(開発の端緒にはついていますが)はまだサイエンスフィクションの世界にとどまっていますが、AIで次世代に一歩近づけることは確かでしょう。テクノロジーの進化でより優れた健康管理が可能になります。今後20年から30年の間に、ひょっとしたらもっと早いかもしれませんが、上述のすべての予測は実現するのではないでしょうか。


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